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No.006

非課税の分配金は得ではない|元本払戻金は買値を下げて戻ってくる

※本記事には広告(PR)を含みます。

売却と税金公開日 書き手 篤

100円玉が落ちてくるピンク色のブタの貯金箱のイラスト(いらすとや)

10,500円で買った投資信託が10,800円まで上がり、決算で700円の分配金が出たとします。受け取る700円のうち、税金がかかるのは300円だけで、残りの400円は非課税です。資産運用業協会の用語集に載っている計算例で、数字はそのまま引いています。

非課税と聞くと得をした気になります。ただ、この400円は利益ではありません。自分が払った元本の一部が、分配金という名前で戻ってきただけです。そして戻ってきた分だけ、買値の記録が書き換わります。取り崩し期に分配金を生活費に回すつもりなら、ここは先に押さえておきたいところです。

赤い封蝋で閉じられた白い封筒のイラスト
イラスト:いらすとや

分配金は2種類に分けて受け取る

資産運用業協会の用語集は、収益分配金を2つに分けています。課税扱いになる「普通分配金」と、非課税扱いになる「元本払戻金(特別分配金)」です(資産運用業協会 用語集「元本払戻金(特別分配金)」)。

分かれ目は、分配金が出たあとの基準価額と、自分の個別元本の比べっこです。個別元本は、ざっくり言えばその人の買値の平均にあたります。

  • 分配落ち後の基準価額が個別元本と同じか上なら、分配金は全額が普通分配金
  • 分配落ち後の基準価額が個別元本を下回るなら、下回った部分が元本払戻金で、残りが普通分配金

同じファンドの同じ分配でも、買った時期が違えば個別元本が違うので、内訳は人ごとに変わります。運用報告書の分配金の欄だけを見ても、自分の内訳は分かりません。

用語集の計算例を、1行ずつ追う

冒頭の例を表に並べます。数字は用語集のとおりで、税額の列だけは私が20.315%で計算しました。

項目金額メモ
買ったときの基準価額(個別元本)10,500円1口あたり
決算前の基準価額10,800円300円の値上がり
分配金700円分配落ち後は10,100円
うち普通分配金300円課税。税額は約61円
うち元本払戻金400円非課税
分配後の個別元本10,100円400円ぶん下がる

値上がりした300円までが利益として課税され、それを超えて払われた400円は元本の払い戻しとして扱われます。手取りは700円から約61円を引いた約639円です。

上がったり下がったりしながら右肩上がりに進む折れ線グラフのイラスト
イラスト:いらすとや

用語集は最後に【取得価額の修正】として、非課税の400円を差し引いた10,100円が新たな取得価額として個別元本が修正される、と書き添えています。私が最初に読み飛ばしたのは、この一文でした。

非課税の400円は、あとで売るときに戻ってくる

個別元本が10,500円から10,100円に下がると、売るときの利益の計算の起点も10,100円になります。仮に、このあと基準価額が10,800円まで戻ったところで売ったとします。

場面課税される額税額(20.315%)
決算時の普通分配金300円約61円
10,800円で売ったときの利益(10,800円−10,100円)700円約142円
合計1,000円約203円

受け取った分配金700円と売却額10,800円を足すと11,500円で、買値10,500円との差は1,000円。課税される額の合計もちょうど1,000円です。分配金が出ずに基準価額が11,500円のまま売った場合と、税率が同じ20.315%なら税額は変わりません。

元本払戻金の非課税は、税金が消える仕組みではなく、後ろへずれる仕組みだと私は理解しています。基準価額が10,100円より上に戻らなければ、そのまま税金はかかりません。戻れば、売るときに精算されます。

税金の納付書のイラスト
イラスト:いらすとや

口数を増やすと、金額の感覚がつかめる

1口あたりの数字は小さいので、仮に100口持っていたとして掛け直します。分配金は70,000円、うち普通分配金30,000円、元本払戻金40,000円です。

普通分配金30,000円にかかる税金は約6,094円。手取りは約63,906円になります。このうち40,000円は、もともと自分が払ったお金です。毎月分配のファンドで同じことが続くと、受け取っている金額のうち運用で増えた分がどれだけあるのかが、明細の見た目からは分かりにくくなります。

数字は分配金の内訳の考え方を見るための仮の設定で、特定の商品の条件でも、私の口座の記録でもありません。

正面から見た小さな電卓のイラスト
イラスト:いらすとや

20.315%の中身と、分配金が入る所得の区分

ここまで使ってきた20.315%も、中身を分けておきます。資産運用業協会の「投資信託の税金」のページによると、公募株式投資信託の分配金と譲渡益には、所得税15%と住民税5%の合計20%がかかります。2013年1月1日以降は、所得税15%に対して2.1%の復興特別所得税(15%×0.021=0.315%)が上乗せされ、合計が20.315%になっています(資産運用業協会 投資信託の税金)。

同じ20.315%でも、所得の区分は分かれます。収益分配金は「配当所得」、途中換金と償還による利益は「譲渡所得」です。さきほどの表で、決算時の約61円は配当所得の側、売ったときの約142円は譲渡所得の側に入ります。

売って損が出た年は、分配金の税金と相殺できる

取り崩し期は、下がった年にも売ることがあります。同じページには、2009年の税制改正以降、確定申告をすれば上場株式等・公募株式投資信託の譲渡損失と、配当金・分配金を損益通算できるようになった、と書かれています。さらに2010年1月からは、特定口座(源泉徴収あり)の中なら確定申告なしで損益通算ができるようになりました。

つまり、同じ特定口座の中で、ある年に分配金から税金が引かれ、同じ年に別のファンドを売って損が出た場合、口座の中で差し引きされて税金が戻ることがあります。通算しきれなかった譲渡損は3年間繰り越せますが、その場合は毎年の申告が必要だと注記されています。

分配金の税金は受け取った時点で確定したように見えて、その年の売却と合わせて最後に整う。私が年末に口座の年間取引報告書を見直すようになったのは、この仕組みを知ってからです。

取り崩しの道具として見ると、どこが違うか

元本払戻金が混ざった分配金を生活費に使うことは、中身だけ見れば、元本の一部を売って現金にしているのと近い動きです。違うのは、金額と時期を自分で決められない点です。

定額と定率の取り崩しの記事で書いたとおり、自分で解約する場合は、いくらをいつ引き出すかを先に決めます。分配金で受け取る場合、額を決めるのはファンドの側で、しかも分配落ちで基準価額そのものが下がります。

もう1点。課税口座で持っている場合、この区分はそのまま税額に効きますが、NISA口座の中では分配金はもともと非課税です。どちらの口座で持っているかで、この記事の話が効く範囲が変わります。売るときの口座ごとの違いは売るときの税金にまとめました。

取引報告書で確かめる3か所

分配金が出たら、販売会社から届く報告書で次の3か所を見ています。

  1. 分配金の総額のうち、普通分配金と元本払戻金(特別分配金)がそれぞれいくらか
  2. 源泉徴収された税額が、普通分配金の額に見合っているか
  3. 分配後の個別元本がいくらに修正されたか

3番目は、売る日まで効き続ける数字です。生活費18か月分を普通預金に分けているのも、分配金の額に家計を合わせずに済ませたいからでした。分配金は受け取った時点で終わる話ではなく、次に売る日の計算まで続いています。

免責事項

本記事の分配金の区分と取得価額の修正についての記述は、2026年9月27日時点で資産運用業協会の用語集と「投資信託の税金」の公表内容を確認して書いています。税率20.315%は公募株式投資信託の分配金・譲渡益に適用される率で、税額は私が計算した概算です。記事中の口数や金額は仮の設定であり、特定の商品の条件ではありません。実際の内訳と税額は、商品・口座の種類・購入時期によって異なりますので、販売会社の報告書および税務署でご確認ください。本記事は特定の金融商品の購入を勧誘するものではありません。

書き手

篤

会社員をしながら、親の年金の手続きと自分の口座の整理を並行してやっています。制度の数字は公的機関の資料で確認し、計算は自分の家計に当てて確かめてから書いています。詳しくは運営者情報をご覧ください。